糖尿病と血糖管理

糖尿病と血糖管理

By the Calorie Control Council

1型糖尿病と2型糖尿病の病因は異なりますが内科的栄養療法のゴールは同じで、糖尿病の管理、および、血糖・脂質・血圧のコントロール不良による合併症を軽減する一助となることです。そのゴールへの到達に向けて、医療専門家が最善の治療を施すためには、科学的根拠に基づく栄養管理ガイドラインが必要不可欠です。このガイドラインを作成した糖尿病専門医は、糖尿病に影響する食事要因の新たな研究論文を定期的にレビューし、どの研究が実際の治療でより有効か評価をしています。糖尿病専門医の3団体から、アスパルテームなどの非栄養甘味料(NNS)の使用が奨められているのでご紹介します。

米国糖尿病学会(ADA)「糖尿病診療指針」(2017年)。

「他の食事を追加して追加のカロリー摂取しなければ、カロリー甘味料の代わりにNNSを使用することで総カロリー摂取量や総炭水化物摂取量を低減することに繋がります。」

この診療指針では、非栄養甘味料(NNS)の使用について、次のように推奨されています。

Tateらによる研究では糖尿病患者を対象としたNNSの他の利点が示されており、それはADAの目標を支持する内容です。カロリー飲料をノンカロリー飲料または水に置き換えたことによる減量効果を評価する試験では、ダイエット飲料グループ(NNSを含む)のほうが、水グループよりもカロリー摂取量が大幅に減少しました。Tateらは、ダイエット飲料を用いることで、飲食物のおいしさや楽しみが得られたことが、水グループよりも試験期間中の既定の食事パターンを継続することに繋がったと結論付けています。

米国栄養士会(2012年に“栄養と食事のアカデミー”に名称変更)「成人の1型および2型糖尿病に向けた内科的栄養療法の根拠」Franzら(2008)による。

「糖尿病患者が、FDAの承認済みNNS入りの食品を一日摂取許容量を超えない量で摂取したいという場合、こうした食品には、他の食物源によるエネルギーや炭水化物が含まれている可能性がある。それを計算にいれなければならない、ということを管理栄養士は患者にアドバイスすること。なお、NNS摂取が血糖値の変化には影響しないことが研究結果として報告されている。」

管理栄養士による専門家委員会は、合計29件の推奨事項をまとめ上げました。NNSを用いた8試験の内容を参照し、いずれの試験でも予め決めた基準を満たしていることが確認できたことから、NNSの使用も推奨事項として含まれています。その内容は、以下の通りです。

「糖尿病患者が、FDAの承認済みNNS入りの食品を一日摂取許容量を超えない量で摂取したいという場合、こうした食品には、他の食物源によるエネルギーや炭水化物が含まれている可能性がある。それを計算にいれなければならない、ということを管理栄養士は患者にアドバイスすること。なお、NNS摂取が血糖値の変化には影響しないことが研究結果として報告されている。」

米国心臓協会(AHA)と米国糖尿病学会の「非栄養甘味料:現在の使用と健康の展望」に関する合同学術声明Gardnerら(2012年)。

「レビューの結果、NNSを正しく用いた場合、砂糖の摂取を容易に減量でき、結果的にエネルギー摂取量および体重の減少やコントロールが可能となると纏められた。但し、他の食物を追加してエネルギー摂取量を増やしてしまうと、NNSの効果は表れ難くなることも示されています。」
この調査の目的は、食事に添加された砂糖の摂取をNNSに置き換えることで容易に減量できるかどうか、それによって、AHA、世界保健機関(WHO)、米国の食生活ガイドラインが提案している推奨レベルに抑制できるか判断することでした。研究論文レビューでは、食事に添加された砂糖をNNSに置き換えた上に、他の総ての食事成分にも影響が及ぶため、調査の目的に的確に応えている研究は数件しか見つかりませんでしたが、糖尿病や血糖値への影響などといったNNSに関するその他の懸念が記載されていることを見出しました。最終的に、調査は以下の通り結論付けられています。

「レビューの結果、NNSを正しく用いた場合、砂糖の摂取を容易に減量でき、結果的にエネルギー摂取量および体重の減少やコントロールが可能となると纏められた。但し、他の食物を追加してエネルギー摂取量を増やしてしまうと、NNSの効果は表れ難くなることも示されています。」

 

糖尿病患者は非糖尿病患者よりもNNSを多く消費する傾向があるという事実に基づき、上記のレビューの様にガイドラインを裏付ける研究以外にも、NNSが血糖値に影響するか否かの評価が複数実施されています。アスパルテームと糖尿病患者を対象とした研究は、アスパルテームの初回認証プロセスの一環として提出されて以来、今でも数多くの研究が実施されています。こうした研究は2002年にButchkoらがレビューし、糖尿病患者においてアスパルテームによる副作用はみられなかったことが報告されています。その後の複数の研究を2007年にMagusonらがレビューしており、やはりアスパルテーム摂取は糖尿病患者にも非糖尿病者にも耐糖能への影響はないと結論付けられました。また、2018年にHigginsらは健常成人を対象とし、12週間のアスパルテームの摂取が血糖値や耐糖能に影響を及ぼさないことを示し、このことを裏付けました。

 

「ほとんどの研究では、健常者および糖尿病患者のどちらにおいても、高甘味度甘味料の摂取による、空腹時または試験食摂取後に測定した血糖値およびインスリン濃度に影響は見られなかった。幾つかの研究でGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)分泌*が緩やかに増加したと報告されているが、インスリン分泌や血糖濃度には影響していない。以上のことから、高甘味度甘味料の摂取は、健康被験者および糖尿病患者に対して短期および中期で血糖値に影響を及ぼさないと判断できる。」

2015年にBruyereらは、健康な被験者と、1型および2型糖尿病患者を対象とした高甘味度甘味料摂取による耐糖能への短期作用(1週間未満)に関する研究論文の対するレビューを実施しました。対象は臨床試験31試験とレビュー2件で、下記の結論に達しました。

「ほとんどの研究では、健常者および糖尿病患者のどちらにおいても、高甘味度甘味料の摂取による、空腹時または試験食摂取後に測定した血糖値およびインスリン濃度に影響は見られなかった。幾つかの研究でGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)分泌*が緩やかに増加したと報告されているが、インスリン分泌や血糖濃度には影響していない。以上のことから、高甘味度甘味料の摂取は、健康被験者および糖尿病患者に対して短期および中期で血糖値に影響を及ぼさないと判断できる。」

* GLP-1は消化管ホルモンの一種で、通常インスリン分泌を増加させ、胃内容排出を遅らせ、グルカゴン分泌を減少させる

非栄養甘味料(NNS)と糖尿病との関連性を主張する研究は、一連の学術的根拠に照らして評価しなければなりません。Romo-Romoらが2016年に報告したように、こうした研究を基に糖尿病患者のNNS使用に関する栄養管理ガイドラインを変更すべきと判断する根拠はありません。NNSによる代謝性疾患への影響(糖代謝への作用など)を検討した彼らのレビューでは、低カロリー甘味料の摂取と2型糖尿病の関連性を主張する研究では、ボディ・マス・インデックス(BMI)の上昇、糖尿病の家族歴、交絡因子としてその他の健康状態などの影響を無視できないことが明らかになりました。

 

さらに、こうした研究の多くは、摂取した低カロリー甘味料の種類を区別しておらず、「ダイエットソーダ」と一括りにして評価し、卓上甘味料や低カロリー甘味料含有食品の影響を評価しておらず、更に、他のダイエット行動や体重変化とNNSの使用開始時を把握できていませんでした。また、糖代謝に対するNNSの影響を示した臨床試験のいくつかには、試験の中で交絡変数が言及されていなかったり調整されていないため矛盾があることも明らかになりました。

 

Romo-Romoらは、考察として、ヒト対象で交絡因子を適切に調整した無作為化臨床試験では、個々のNNSを長期摂取後に糖代謝の変化をもたらしうるメカニズムを説明することはできないと述べています。ただし、レビュー済みの根拠に基づき、糖尿病など特定の代謝性疾患の栄養療法において、一日摂取許容量の範囲内かつ他の食品からカロリーを補わないのであれば、NNSは、砂糖の代用品として有用なツールとみなすことができると結論付けています。

糖尿病患者で低カロリー甘味料に関する情報をお探しの方には、米国糖尿病学会が提供する「食べても良いもの」「飲んでも良いもの」のページで更に詳しい情報をご覧いただけます。

引用文献

American Diabetes Association. Standards of medical care in diabetes–2013Diab Care. 2013;36(Suppl 1):S11–66 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23264422

Bruyere O et al. Review of the nutritional benefits and risks related to intense sweeteners. Arch Pub Health. 2015;73:41-51 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4590273/

Butchko HHet al. Aspartame: Review of Safety. Regul Toxicol Pharmacol. 2002 Apr;35(2 Pt 2):S1-93 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12180494

Evert AB, et al. Nutrition Therapy Recommendations for the Management of Adults With Diabetes. Diab Care. 2013;36:3821-3842 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24107659

Franz MJ et al. The evidence for medical nutrition therapy for type 1 and type 2 diabetes in adultsJ Am Diet Assoc. 2010;110:1852–89 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21111095

Gardner C et al. Nonnutritive Sweeteners: Current Use and Health Perspectives. A Scientific Statement from the American Heart Association and the American Diabetes Association. Diab Care. 2012;35:1798-1808 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22777177

Magnuson BA, et al. Aspartame: a safety evaluation based on current use levels, regulations, and toxicological and epidemiological studies. Crit Rev Toxicol. 2007;37(8):629-727 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17828671

Romo-Romo A, et al. Effects of the Non-Nutritive Sweeteners on Glucose Metabolism and Appetite Regulating Hormones: Systematic Review of Observational Prospective Studies and Clinical Trials. Holscher C, ed. PLoS ONE. 2016;11(8):e0161264. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27537496

Tate DF et al. Replacing caloric beverages with water or diet beverages for weight loss in adults: Main results of the Choose Healthy Options Consciously Everyday (CHOICE) randomized clinical trial. Am J Clin Nutr. 2012;95(3):555-563 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22301929

2月 13, 2017 Myths, カテゴリーなし