体重管理
By the Calorie Control Council
甘味料すべてをひとまとめにしている
非栄養甘味料(NNS)に批判的な人々は、ある1種類の甘味料に対する否定的な見解を、他の全ての甘味料にも同じような影響があると言います。研究に用いた特定のNNSに対する認識不足や、全てのNNSに対して摂取した際に同じ作用があるという考え方が、既存の学術的研究の結果の解釈を誤らせているのです。肥満は複合的な要因で発生する疾患であり、様々な要因との関係が議論されています。そのため、体重減少に対するNNSの有効性に関する研究や、アスパルテームに特化した有効性に関する研究は、難しさがあります。
動物試験の結果は人間に当てはまらない
動物試験により、NNSが体重減少、空腹や食欲に影響しうるメカニズムが示唆されたり、主要栄養素が異なる食事の影響比較ができますが、動物試験の結果がヒトで再現するとは言えません。個人の食嗜好、食事に対する文化的な意味合い、社会的に根付いている食生活、その他多数の要素(収入、教育、食品の入手事情、生活習慣など)がわたしたちの毎日の食事の選択に影響しているため、特定の成分を摂取し続ける動物試験の結果を人間に当てはめる事には限界があるのです。
研究のウィークポイント:主観的想起
集団に対して食物摂取情報を収集分析する研究では、個人の主観的な認識が情報に大きく影響します。飲食したものをすべて正確に思いだして報告するということは、それが24時間以内であれ2週間以内であれ、ほとんどの人にとっては難しいことです。更には、分量や食品成分は推定になってしまいます。例えば、2枚のピザの量や食品成分が完全に一致することは無いといっていいでしょう。しかし研究ではピザの報告に対して同じ分量や成分として扱うことになるのです。また、適切な食品を選択すべきという先入観が、摂取した飲食品の報告内容に影響してしまいます。更には、報告された内容を確認する方法もありません。アスパルテームなどのNNSを摂取することの人への影響を過去の食品摂取歴にさかのぼって分析する場合、これまでに述べた問題点に加え、摂取する商品の種類、量、頻度が人生を通して変化することの影響は把握できないという難しさもあります。
調査結果を国民全体に当てはめられるのか
介入試験の有効性を評価するには、ヒトを対象とした減量効果を評価する臨床試験が適していますが、こうした試験にも難しさがあります。基礎代謝率と必要エネルギー量は、年齢、性別、体組成、身体活動、睡眠、体温、健康状態などによる個人差があります。その結果、まったく同じ食事を摂っても、エネルギーと栄養素の消化や代謝には人により違いが出ます。また、食べたいと思うきっかけも、生理的、情緒的、社会的、環境的に異なります。WansinkとChandon(2014年)は、1回の食事で食べる量は、食器の色や大きさ、部屋の照明、周囲の騒音、出された食事の量、誰と一緒に食べるのか、その他多数の要素によって影響される、と報告しています。こうした変数のほとんどは、短期間の臨床試験であればコントロールすることができますが、自由に生活している一般集団で期間を定めずにコントロールすることは事実上不可能です。
NNSはエネルギー摂取量と体重を減少させるとランダム化比較対照試験が証明
多くの試験には方法論的問題があるため、エネルギー摂取量と体重に対してアスパルテームなどのNNSが担う効果に関する信頼性の高い情報は、短期・長期介入無作為化比較対照試験のメタアナリシスや系統的レビューを根拠として引用しなければなりません。Rogers他(2016年)は、まさにこの試験を実施しました。さまざまな試験設計、対象集団(小児、成人、男性、女性、痩せ型・太り気味・肥満グループなど)におけるヒト介入試験の結果として、砂糖の代わりにNNSを摂取するとエネルギー摂取と体重減少の一助となることを裏付ける根拠が多数示されたと報告しています。また、人間を対象とした短期・長期介入試験からは、NNSがエネルギー摂取量を増加させるという根拠は一切みられなかったとも報告しています。こうした知見は、Zheng(2015年)、Bellisle(2015年)、Miller-Perez(2014年)、Mattes(2009年)、の最近の研究でも裏付けられています。最新の研究ではHiggins(2018年)らが、12週間のアスパルテーム摂取による体重や体組成への影響をヒト介入試験で調査し、影響が無いことを報告しています。
また、「栄養制限食と運動」プログラムの一環としてNNSを使用した研究では、エネルギー摂取量と体重減少の効果が実証されており、Peters(2016年)、Peters(2014年)、Catenacci(2014年)、Tate(2012年)、Phelan(2009年)、De La Hunty(2006年)が証明しています。
Rogers他(2016年)とPereira(2014年)によると、NNSやNNS入り飲料を摂取して体重が増加したという関連性を報告している疫学研究は十分な検討が行われていないと述べています。その理由は、先に述べたような個人の特性や対象集団の行動がコントロールされていないためことです。また、NNSの使用が体重増加や病歴傾向を引き起こすのではなく、こうした問題が生じた結果としてNNSを使用し始めたという、逆因果関係がある可能性が強いことも指摘しています。Rogers他とPereiraも、疫学研究というのは比較対照臨床試験で検討する仮説をたてる際の一助として実施されるものであり、因果関係を証明するものではないとも指摘しています。
米国栄養士会の声明
NNSと体重管理の関係性については、米国栄養士会(AND)発行の声明「栄養甘味料と非栄養甘味料の使用」でも取り上げられており、2012年に内容が更新されています。この文書には、米国栄養士会のエビデンス分析処理とエビデンス分析ライブラリ(EAL)の情報を用いて実施した文献の体系的レビューが記載されており、実践に関する疑問を特定し、それぞれの疑問に対する結論も述べられています。成人や小児を対象としたアスパルテームの使用と、食欲や食物摂取とエネルギーバランス(体重)に対する作用に関する疑問は3件ありました。その結論は次のとおりです。
成人の場合、「全体的な体重減少や体重維持プログラムの一環としてアスパルテームやアスパルテーム入り製品を摂取すると、減量幅を大きくすることができ、長期にわたって体重維持に有用です。」 グレードI=良い
成人の場合、「アスパルテームは食欲や食物摂取に影響しないという十分な根拠があります。」 グレードI=良い
小児の場合、「アスパルテームの摂取が小児の食欲や食物摂取に影響することを示す根拠がエビデンスは限られている。2009年の改訂版では、この疑問に対する選択基準に見合う新たな研究はなく、(中略)2009年の作業グループは、アスパルテーム作業グループ(2008年)が策定した結論と同意見です。」グレードIII =制限あり
体重減少や体重維持に際するアスパルテームなどの非栄養甘味料の使用については、「成人の過体重および肥満の治療介入」(2016年)に関するANDの見解でさらなる裏付けが得られています。この見解では、エネルギー摂取量を低下できる食事療法は多数あるので、米国登録栄養士(RDN)が肥満治療として食事介入を行う場合は、相談者の好みや健康状態、栄養状態を考慮することが重要であるという点が強調されています。アスパルテームを使うことで、食事のおいしさや楽しみをそのままに保ち、飲食品のカロリーを減らし、減量目標達成することができます。
EALの推奨:「体重減量や体重維持については、RDNは全体的な体重管理プログラムの一環として、カロリー食を減らす、身体活動を高める、行動戦略を立てる、などの項目を入れること」評価:強、重要
EALの推奨:「体重減量については、RDNは、太り気味や肥満の成人に対して、カロリー量の低下目標が達成されている場合には、多数の食事療法が有効であると助言すること」評価:強、重要
EALの推奨:「体重維持について、RDNは、個別化した食事計画(患者の好みや健康状態など)を規定して、十分な栄養を維持しながらも減量した体重を維持できるようにカロリー摂取を減少させること」評価:強、重要
NNSやアスパルテームと体重管理に関するいまだに続く疑問に対するもっとも重要な回答は、NNSは薬物ではなく、バランスのとれた食事と適度な身体活動により利用者が体重をうまく維持管理するためのツールのひとつだということです。