アスパルテームってなんですか?
アスパルテームは低カロリー甘味料です。世界中の低カロリー/カロリーオフ飲食品に使われています。炭酸飲料、粉末飲料、チューインガム、菓子類、ゼリー、デザートミックス、プリン、フィリング、冷凍デザート、ヨーグルト、卓上用甘味料などのほか、ビタミン剤や砂糖不使用の咳止めノド飴などにも使われています。同じ重さ当たりのカロリーはタンパク質や砂糖と同等ですが、アスパルテームは砂糖の約200倍の甘さがあるため、求める甘さを出すために必要なアスパルテームはごく少量で、砂糖に比べてカロリーを大幅に低減できます。
アスパルテームは何からできているのですか?
アスパルテームは、フェニルアラニンとアスパラギン酸という2種類のアミノ酸と、メタノールとで構成されています。化学名はL-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステルです。アミノ酸はタンパク質の構成単位であり、互いに結合してタンパク質を形成します。
アスパルテームに入っているフェニルアラニンとアスパラギン酸は、普段口にするタンパク質含有食品中に、より大量に含まれています。メタノールはアルコールの一種で、ヒト、動物、植物に自然に存在します。新鮮な果物、野菜、フルーツジュース、発酵飲料などに自然に含まれています。
アスパルテームは安全ですか?
世界100ヵ国以上の管轄規制当局が、すべてアスパルテームの安全性を確認しています。日常の摂取量よりはるかに大量に摂取した場合でも、アスパルテームが安全であることは科学的根拠でしっかりと裏付けられています。
アスパルテームは200試験以上の研究で安全性が証明されているように、世界でもっとも研究されている食品添加物の1種で、安全に使用し続けられている長い歴史があります。2013年に発表された欧州食品安全機関(EFSA)のアスパルテーム安全性の再評価の結果、アスパルテームは、乳児、小児、妊婦なども含め一般の人々に安全であると結論づけられました。また、米国食品医薬品局(FDA)の研究者が食品中のアスパルテームの安全性に関する科学的データを再評価し、一般の人々に安全であると結論づけました。米国農務省(USDA)によると、アスパルテームは食品のなかでももっとも網羅的に研究されている物質の1種と言われています。
2012年、米国栄養士会(AND)は、「米国人のための食生活指針(Dietary Guidelines for Americans)、食事摂取基準(Dietary Reference Intakes)など、現行の連邦栄養推奨ガイドラインに準じた上で、個人の健康目標や嗜好に基づいた食事プランの範囲内で利用するのであれば、消費者は、さまざまな栄養甘味料や非栄養甘味料(NNS)を安全に楽しむことができます。」と述べています。アスパルテーム摂取に伴う副作用に関してANDは「アスパルテーム摂取による副作用は、一般消費者にはありません。」と結論づけています。
但し、アスパルテームにはフェニルアラニンが含まれているため、フェニルアラニンの代謝が困難なまれな遺伝性疾患であるフェニルケトン尿症(PKU)患者一日の摂取量を管理する必要があります。日本ではPKU患者のために、アスパルテームを使用している商品にはフェニルアラニンを含む旨を表示しています(「アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物」と表記されています)。
アスパルテームは健康的な食事にどう役立つのですか?
アスパルテームは砂糖と同じ甘さを実質的にノンカロリーで提供できるので、推奨される食事プランを実現するために非常に効果的なアイテムです。世界保健機関(WHO)による2015年の「成人と小児の糖類摂取」で、糖類の摂取量は、成人、小児ともに、全エネルギー摂取量の10%未満に減量することを推奨しています。ほかにも、世界中の多数の公衆衛生当局が糖類の摂取を減量するよう推奨しています。たとえば、2015~2020年の米国人のための食生活指針では、砂糖から摂取するカロリーは、1日摂取カロリーの10%未満とすることを推奨しています。英国公衆衛生庁はアスパルテームなどのノンカロリー甘味料を試してみるよう勧めています。通常のソフトドリンクをダイエットソフトドリンクに置き換えるだけでも約150キロカロリー抑えられます。コーヒー、紅茶、シリアルなどに入れる砂糖小さじ2杯を低カロリー卓上甘味料1包に置き換えて1日3回で計算すると、1日約100キロカロリー抑えられます。普通のゼリー1個をアスパルテーム使用のゼリーに置き換えると約80キロカロリー抑えられます。
妊娠中や授乳中の女性もアスパルテームを摂取できますか?
摂取できます。妊娠中や授乳中のアスパルテームの安全性を確認した研究が報告されています。また、規制当局は科学的根拠をレビューして母子双方について考察し、アスパルテームなどの食品成分の安全性を判断しています。体内でアスパルテームは、妊娠中や授乳中の女性が日常の食事で毎日摂取するものと同じ成分(フェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノール)に分解されます。妊娠中は十分なカロリーを摂ることが重要なので、栄養素の少ない食品ではなく、必要な栄養素が摂れる食品からカロリーを摂ることが大切です。アスパルテームで甘味をつけた様々な飲食品は、余分なカロリー摂取を抑えながら妊婦に十分な甘さの満足感を与えることができるので、その分、栄養価の高い食品を摂ることができます。カナダ栄養士会では、アスパルテームや他の低カロリー甘味料で甘味をつけた飲食品は、妊娠中に必要な栄養価の高い食品とは置き換えるべきではないと指摘しています。
アスパルテームは料理やパン作りに使えますか?
アスパルテームは、料理やパン作りで、さまざまなレシピにご利用いただけます。ただし、長時間の加熱や焼き時間が必要なレシピでは、甘味が低下する場合があり、期待する甘味が得られない可能性があります。長時間の過熱が必要な場合には、メーカーが推奨する調理方法でお使いいただくと良いでしょう。また、加熱調理の終わりごろにアスパルテームを入れるようなレシピでも甘味を維持することができます。
アスパルテームの一日摂取許容量はどのくらいですか?
一日摂取許容量(ADI)とは、生涯にわたって安全に摂取できる1日あたりの量を非常に高い安全率のもとに計算したものです。米国食品医薬品局(FDA)はアスパルテームの一日摂取許容量を50 mg/体重kg/日と定めています。この一日摂取許容量は、体重約70kgの成人が、1本350mlのダイエット炭酸飲料を19本、110gのゼリーを42個、卓上甘味料を97包のいずれかを毎日摂取しなければならない量です。体重約23kgの子供では、1本350mlのダイエット炭酸飲料を約6本、110gのゼリーを14個、卓上甘味料を32包のいずれかを摂取してやっとこの一日摂取許容量になります。一日摂取許容量を超えて摂取しても十分に安全です。国連食糧農業機関/世界保健機関の食品添加物専門家会議(JECFA)、欧州食品安全機関(EFSA)、豪州・ニュージーランド食品安全局(FSANZ)など、他の機関ではアスパルテームの一日摂取許容量を40 mg/体重kg/日に設定しています。一日摂取許容量の数値は異なっていますが、この分量は、平均寿命が延びていくことを加味したうえで生涯にわたって継続的に摂取しても安全な量を控えめに計算されたものであると認識することが重要です。継続的に摂取していて、ある時点で急に安全ではなくなり健康上の問題が生じることはありません。
食品にはどれくらいアスパルテームが入っているのですか?
食品に用いられるアスパルテームはごく少量です。砂糖小さじ1杯と同じ甘さにするために必要なアスパルテームは、たった小さじ1/200杯です。甘味料の1包サイズで考えてしまうと、アスパルテームを実際よりも多く使っていると思いがちです。甘味料1包の中には、ボリュームを増やし、飲食品に添加しやすくするために他の成分と組み合わせて入っているのです。
アスパルテームは健康に有害ですか?
いいえ。科学的な根拠によって、一般に使用される分量よりずっと多量に使用しても、アスパルテームは安全であること、有害な副作用との関連性はないことが明確に示されています。米国食品医薬品局(FDA)は1982年以降のアスパルテームの安全性に疑問を投げかける主張を調査し、「健康に有害であるということを示す合理的な根拠はない」、「アスパルテームが誘発したと報告された症状には、アスパルテームとの因果関係はない」と判断しました。
1984年、米国疾病管理予防センター(CDC)はアスパルテームの使用に関する消費者苦情517件をレビューし、そうした苦情には、「アスパルテームの使用に伴って、重大で広範囲な健康への影響があるという根拠はなかった」と結論づけました。また、CDCは、「報告が多い症状のほとんどは軽度のもので、一般的によくある症状である」とも述べています。こうした苦情に呼応して、主要な学術機関の著名な研究者たちが多数の科学的研究をさらに実施しました。その結果、アスパルテームは、頭痛、けいれん発作、気分・認知・行動の変化、アレルギー反応などといった有害な健康への作用を伴わないことが歴然と証明されました。
アスパルテームで食欲が増進したり、体重増加の原因になりますか?
いいえ。アスパルテームは、空腹感、食欲、食物摂取量を高めたり、体重を増加させたりしないことが科学的な根拠をもって証明されています。実際には、さまざまな研究によって、アスパルテームが体重管理の有効なツールであることが明らかになっています。米国栄養士会は、「全体的な減量や体重維持プログラムの一環としてアスパルテームやアスパルテーム入り飲食品を使用することで、さらに体重減少が可能となり、長期間にわたる体重維持をサポートできる」と述べています。
アスパルテームはアレルギー反応の原因になりますか?
いいえ。2015年のSathyapalanらの研究では、アスパルテームを摂取した被験者と摂取しなかった被験者の間にアレルギー反応症状に差はみられませんでした。
アスパルテームの使用に伴ってアレルギー症状が出たと主張する人も若干いますが、これは根拠の乏しい症例報告にすぎません。これに対して、適切な研究デザインによる科学的試験が米国国立衛生研究所および主な大学病院6施設で実施されました。アスパルテームによってアレルギー反応が起きたと考える人々を対象にした一連の試験の結果、アスパルテームはアレルギー反応に関連していないことが明確に証明されました。食物アレルギーが疑われる人は、認定アレルギー専門医などの適切な医療専門家による診断や治療を受けてください。御自身による診断では、疾患の治療が遅れてさらに深刻な症状となってしまうおそれがあります。
アスパルテームは頭痛と関係がありますか?
いいえ、学術文献でそのような裏付けはありません。アスパルテーム使用者と非使用者との比較でも、頭痛の発生率には差がないという研究結果が示され続けています。こうした研究が、「New England Journal of Medicine」、「The Journal of Clinical Pharmacology」、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」などで発表されています。
糖尿病患者もアスパルテームを摂取できますか?血糖値に影響しませんか?
アスパルテームは糖尿病患者にも安全で有用です。アスパルテームは短期的にも長期的にも血糖値に影響しないことが研究結果で示されています。米国に拠点をおくジョスリン糖尿病センターによると、「アスパルテームの安全性は十分に確立されている。こうした学術研究の結果から、アスパルテーム入り食品を摂ることは、他の食品を摂ることとなんら変わりはなく、健康に悪影響も及ぼさないことが証明されている」としています。
PKUってなんですか?
フェニルケトン尿症(PKU)は、必須アミノ酸であるフェニルアラニンがうまく代謝できなくなるまれな遺伝性疾患です。必須アミノ酸は、正常な成長、発育、身体機能に必要なもので、体内では作ることができないので食事から摂らなければなりません。PKU患者は食事から摂ったフェニルアラニンを代謝できないため、これが体内に蓄積し、精神発達遅滞など健康障害をもたらす可能性があります。日本や米国や他の多数の国々では、新生児にはすべてPKUのスクリーニング検査が義務付けられています。この検査によって、フェニルケトン尿症を早期に発見することができます。PKU患者は、出生時から青年期、あるいはそれ以降も、フェニルアラニンを厳密に制限した特別食を摂ることになります。PKUの女性患者は、妊娠中もこの特別食に従わなければなりません。PKU患者にとっては、アスパルテームはフェニルアラニン摂取に繋がる食品のため、米国と欧州ではアスパルテーム入り食品に対して、アスパルテーム入りである表示を義務付け、患者がアスパルテーム入り食品を確認できるようにしています。日本では「アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物」と表記してフェニルアラニンを含む旨を表示しています。なお、米国では出生児の約1万5000人に1人、日本では約12万5000人に1人がPKUと言われています。
アスパルテームはてんかん患者に安全ですか?
アスパルテームは子どもの行動に影響しますか?
いいえ。米国のエール大学医学部やヴァンダービルト大学医学部など、学術研究機関で実施された、アスパルテームを大量に投与した小児の行動を評価した複数の研究により、アスパルテームを摂取しても、「多動」や注意欠陥障害(ADD)などの行動変化を小児にもたらすことはないことが確認されています。
アスパルテームでメタノール中毒になりますか?
メタノール中毒は、食品ではなく非常に高濃度のメタノールが入った製品、たとえばフロントガラス用洗浄液、不凍液や融氷液、ペンキ落とし液、工業用アルコールなどを摂取した際に生じます。場合によっては、家庭で蒸留した蒸留酒にも大量のメタノールが含まれていることがあります。こうした製品を飲んでしまうと、身体のメタノール代謝処理が追いつかなくなり、健康に影響が出る可能性があります。メタノールを含む食品や、アスパルテーム入り飲食品には、非常にわずかな量のメタノールしか含まれていないため、メタノール中毒を起こすほどの量を摂取することは不可能です。メタノールは、新鮮な果物、野菜、フルーツジュース、発酵飲料などに自然に含まれています。
ホルムアルデヒドはアスパルテームからできているというのは本当ですか?
まず、わたしたちの身体は代謝の際に自然にホルムアルデヒドを産生していることを知っておきましょう。ホルムアルデヒドと聞くと恐ろしく感じますが、コーヒー、チーズ、その他多数の食品にも元々含まれています。一方で、アスパルテームには実のところホルムアルデヒドは入っていません。体内でメタノールが代謝されるとホルムアルデヒドに変換されますが、そのメタノールがリンゴからでも、トマトジュースからでも、アスパルテームからであっても同じです。体内ではホルムアルデヒドが急速に代謝、つまりギ酸に変換されて尿中に排泄、あるいは二酸化炭素と水に分解されます。ホルムアルデヒドが体内に蓄積することはありません。必要ない分は体外に排出されます。メタノールの取り込みがアスパルテーム、果物、野菜のいずれからであっても、ホルムアルデヒドによるリスクはありません。
摂取したアスパルテームは体内でどうなるのですか?
アスパルテームは小腸で消化されます。消化時には、タンパク質を含む他の食物の場合と同じ消化酵素によって、2種類のアミノ酸(アスパラギン酸とフェニルアラニン)に分解されます。牛乳や卵などの食品にもこうしたアミノ酸が含まれています。アスパルテームがそのまま血液中に入ることはありません。わたしたちの体は、他のタンパク質食品の消化で得られたアミノ酸の場合と同様に、アミノ酸を使って新しい組織や細胞を作ります。アスパルテームの分解によってメタノールも少量発生します。メタノールは果物や野菜にも含まれています。実際、トマトジュースには、同量のアスパルテーム入り飲料の約6倍のメタノールが含まれています。
アスパルテームは実際どれくらいの量を使用されていますか?
大規模市場調査によると、一般家庭や様々なグルーピングがなされたグループのアスパルテーム使用量は、一日摂取許容量よりもずっと少ないことが示されています。小児も対象に入れた一般家庭のうち、アスパルテームのヘビーユーザー(90パーセンタイル)による使用量は、一日摂取許容量の5~10%でした。つまり、10人のうち9人の使用量は、一日摂取許容量の10%以下ということになります。小児は、体重に比例すると、あらゆる食物成分を成人よりも大量に消費します。2~5歳の小児によるアスパルテーム使用の90パーセンタイルは、一日摂取許容量のわずか約10%です。小児には適切な成長と発育のためにカロリーが必要であり、保護者は栄養過多や栄養欠乏にならないように食事を監督する必要があります。