アスパルテームは砂糖よりもはるかに甘みが強い低カロリー甘味料です。アスパルテームはごく少量で甘みを出せることから一般的に他の食品成分と混合され、消費者が簡単に同量の砂糖の代わりに使える様に調整されています。
砂糖の主成分はショ糖と呼ばれる物質で、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した炭水化物(糖質)の一種です。アスパルテームは2種類のアミノ酸、すなわち、アスパラギン酸とフェニルアラニンおよびメタノールが結合した物質です。アスパルテームは体内でアスパラギン酸とフェニルアラニンに分解、同時に少量のメタノールが発生します。これらの物質は、食肉、牛乳、果物、野菜など、私たちが日常的に口にしている食品にも多く含まれており、その含有量はアスパルテームに含まれている量をはるかに上回ります。したがって、他の食品から摂取される量に比べアスパルテームから摂取されるこれらの物質の量は微量です。また、食品から摂取した場合でもアスパルテームから摂取した場合でも、アミノ酸とメタノールは体内では区別されることなく代謝されます。
24時間体制の報道、インターネット、SNS―あらゆるメディアが視聴者数、リスナー数、閲覧者数、クリック数を競い合っており、センセーショナルな見出しで溢れかえっています。食品や栄養素に関する個人的見解や誤った解釈を展開する研究が注目されてしまい、人々に混乱や恐怖を生じさせることも実際に起きています。アスパルテームも例外ではありません。健康的な食事に役立つアスパルテームには、安全性や有用性を裏付ける多数の根拠があるにも関わらずメディアやインターネット上では根も葉もない批判的な主張が拡散されています。恐怖を煽る見出しを信じるのではなく、情報源に目を向け、他の見解にも目を通し、かかりつけの医師や登録栄養士など信頼できる専門家に相談し、ご自身の健康やアスパルテームなどの人工甘味料の役割についても話し合ってください。アメリカ栄養士会、アメリカ心臓協会、アメリカがん協会、アメリカ糖尿病学会、アメリカ農務省、アメリカ食品医薬品局、欧州食品安全機関、ニュージーランド栄養財団など、他の多くの信頼できるサイトでも、信頼性のある一般的な情報が提供されています。
30年以上前に認可されて以降、アスパルテームにはたくさんの紆余曲折を乗り越えてきた非常に興味深い歴史があります。
TImelineアスパルテームの略史
1965 年
アスパルテームが発見される。
1980 年
FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)により、一日摂取許容量(ADI)が体重1キログラム当たり40mg(例:体重約60kgの成人であれば一日あたり350mlのダイエット炭酸飲料13本を生涯に亘り安全に消費できる)での使用が認可される。
1981 年
アメリカ食品医薬品局(FDA)により乾燥した食品での使用が認可される。
1983 年
日本の厚生省(当時)が食品添加物として認可。
FDAは使用認可の範囲を広げ炭酸清涼飲料水での使用を認可。
1984 年
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が報告されたアスパルテームの使用に起因する有害事象を調査(報告された有害事象の苦情には、頭痛、不眠症、目まい、気分の変化、吐き気、下痢、その他胃腸の異常が含まれていた)。CDCは、「かなり様々な有害事象が報告されているものの、報告が多かった症状のほとんどが軽度で、一般集団によくある症状である」と断定。
1999 年
多発性硬化症協会が、アスパルテームが多発性硬化症(MS)を引き起こすという苦情が誤りだと指摘。同協会はアスパルテームとMSに関連性はないと結論付ける。
1999 年
FDAとブラジルの規制機関Agencia Saudeは、アスパルテームが健康に悪影響を及ぼすというウェブベースの広範にわたる主張には信憑性がないと指摘。これらの主張を裏付ける科学的根拠がなく、報告されている問題は裏付けが乏しいと断定。
2000 年
イギリスの食品基準庁もアスパルテームに関連するインターネット上の主張を調査。裏付けが乏しく科学的根拠がないというアメリカとブラジルによって報告された調査結果が事実であることを確認。
2002 年
『Regulatory Toxicology and Pharmacology』誌に研究論文「Aspartame: A Safety Review」(アスパルテーム:安全性レビュー)が掲載される。同論文の著者は「30年以上にわたる徹底的な研究の末、アスパルテームの安全性に関する問題を収束させる時を迎えている。 アスパルテーム以上に徹底的に研究された食品成分を特定するのは難しい」と結論付けている。
2006 年
がん研究のための規格、許容範囲にあるプロトコル、研究の原則を遵守しない方法を使用し、イタリアのラマツィーニ財団(Ramazzini Institute)がアスパルテームによりラットが白血病およびリンパ腫に罹患したと示唆。
2006 年
欧州食品安全機関(EFSA)がラマツィーニ財団の研究結果を批判。アスパルテームに関して摂取を控えることを推奨する理由は一切ないと指摘。
2007 年
FDAがアスパルテームの安全性を再確認。EFSA同様ラマツィーニ財団によって報告された研究結果を批判。この研究のデザイン、実施方法、報告、解釈には、動物実験の被検体における感染症の存在など特に変数が制御されていないことにより研究結果に支障をきたす重大な欠陥があると指摘。
2007 年
『Critical Reviews in Toxicology』誌で公表された研究結果により、以下の見解が指摘される。「アスパルテームを摂取した者に空腹感の増大は認められない。反対に研究では、総合的な体重管理プログラムの一環としてアスパルテームが効果的なツールになり得ることが示唆された。アスパルテームは十分に特徴付けられ、徹底的に研究された高甘味度甘味料で、食品に安全に使用されてきた長い歴史があり、様々な食品のカロリー量の軽減に役立つ」
2009 年
EFSAの食品添加物及び食品に添加する栄養源に関する科学パネル(ANS)はアスパルテームの安全性を再確認し、「総合的に見た結果、パネルは欧州のラマツィーニ財団によって最後に公表された研究も含め現段階で入手できるすべてのエビデンスに基づき、アスパルテームの遺伝毒性または発がん性の可能性を示す徴候はないと結論付けた」と主張した。同パネルは現在一般的に認められた毒物学的研究手法が試験デザインに反映されていないと繰り返し指摘した。
2013 年
ESFAのANSパネルが再度アスパルテームを研究し、その安全性を再び確認。同パネルの議長であるAlicja Mortensen博士は「この見解は、これまでに行われたアスパルテームのリスク評価の中で最も包括的な評価の一つである」と主張。